暗号資産を資産全体の中でどう位置づけるか
値動きの幅が他の資産と桁違いなので、全体の中での比率を把握していないと、気づかないうちに偏ります。
別枠で見ていると、比率が分からない
暗号資産は取引所の口座にあり、証券口座とは完全に別です。 アプリも別、画面も別。自然と別枠のものとして見ることになります。
ところが資産全体で考えるなら、暗号資産も資産の一部です。 株式・債券・現金と並べて、全体の何割を占めているのかを把握していないと、 リスクの大きさが判断できません。
値動きの幅が桁違いである、という前提
暗号資産を資産配分の中で考えるとき、無視できない特徴があります。 価格の変動幅が、株式と比べて明らかに大きいことです。
株式指数が 1 年で 2 割動けば大きなニュースになりますが、 暗号資産では珍しくありません。数か月で倍になることも、半分になることもあります。
これが資産配分にとって何を意味するか。 比率が勝手に動くということです。
比率は放っておいても変わる
たとえば資産の 5% を暗号資産に配分したとします。 その後、暗号資産の価格が 3 倍になり、他の資産が横ばいだったとすると、 比率はおよそ 14% まで上がります。何も買い足していないのにです。
逆に価格が 3 分の 1 になれば、比率は 2% を切ります。
「最初に決めた配分」と「今の配分」は別物です。 そして後者は、確認しなければ分かりません。
同じ画面で見ることの意味
1. 全体に対する比率が出る
多くの暗号資産取引アプリは、暗号資産の中での配分しか表示しません。 「ビットコインが暗号資産の中で 60%」は分かっても、 「ビットコインが全資産の中で何%」は分かりません。
後者こそが、リスクを判断するために必要な数字です。
2. 損益の規模を比べられる
暗号資産の損益は率で見ると大きく振れますが、 金額で見ると、株式のほうが大きいことがあります。 元本の規模が違うためです。
率だけを見ていると心理的な影響が大きくなりすぎます。 同じ画面に並べて金額で比較すると、実際の重みが見えます。
3. 全体の増減に対する寄与が見える
資産全体が前日比でマイナスだったとき、 その原因が暗号資産なのか株式なのかは、並べてみないと分かりません。 要因が分かれば、落ち着いて受け止めやすくなります。
記録するときの実務
ドル建てで記録するか、円建てにするか
暗号資産の価格は、国際的には米ドル建てで表示されるのが一般的です。 一方、日本の取引所では円建てで売買します。
記録は買ったときの通貨のまま残すのが扱いやすい方法です。 円で買ったなら円、ドルで買ったならドル。 はじめから片方にそろえると、換算に使ったレートが分からなくなります。
ただし全体の比率を出すときは、どこかで共通の通貨にそろえる必要があります。 株式も暗号資産も同じ基準日のレートで換算しなければ、比率が意味を持ちません。 「元の通貨で持っておき、比べるときに換算する」と考えると整理できます。 この点はドル建て資産の円換算で詳しく扱っています。
取引所に置いたままか、自分で保管しているか
資産の把握という意味では、置き場所が違っても同じ「保有」です。 ただしリスクの性質は違います。 取引所の口座にあるものは取引所の破綻リスクを負い、 自分で鍵を管理しているものは紛失のリスクを負います。
記録上はメモで区別しておくと、万一のときに整理しやすくなります。
ステーキング報酬などは別に考える
保有しているだけで増える仕組みがある場合、 数量が変わるので記録の更新が必要になります。 株式の配当のように「現金が入る」のではなく、 「持っている数が増える」形なので、扱いが異なります。
税務の面でも別です。こうして受け取った暗号資産は、 受け取った時点の時価が収入として扱われるのが原則で、 その後に売ったり交換したりすれば、そこでも改めて損益の計算が必要になります。 数量だけでなく、受け取った日時と、そのときの円換算額を残しておくと後で困りません。
税の扱いは株式と大きく違う
日本の税制では、暗号資産の利益は原則として雑所得として扱われ、 上場株式の譲渡益(申告分離課税)とは計算方法が異なります。 株式の損失と相殺することもできません。
課税されるのは「日本円に換えたとき」だけではありません。 暗号資産で商品を買ったときや、別の暗号資産と交換したときも、 そこで持っていた暗号資産を手放したものとして損益の計算が必要になります。 「円に戻していないから関係ない」とはなりません。
なお、取引の規模や帳簿の状況によっては別の所得区分になる場合があり、 課税のしかたそのものについても見直しの議論があります。 実際の申告にあたっては、国税庁の資料または税理士にご確認ください。 この記事で扱うのは資産の把握のしかたであって、税務の解説ではありません。
ここで押さえておきたいのは、「同じ画面で見る」ことと 「同じものとして扱う」ことは違うという点です。 比率を把握するために並べて見ますが、税や売却の判断では別物として考える必要があります。
まとめ
- 多くの取引所アプリでは暗号資産の中での配分しか見えない
- 資産全体に対する比率は、他の資産と並べて初めて分かる
- 値動きが大きいため、比率は放っておいても勝手に動く
- 率ではなく金額で並べると、実際の重みが見える
- 記録は買ったときの通貨のまま。比率を出すときに共通通貨へ換算する
- 保管場所(取引所か自分の管理か)はメモで区別する
- 把握のために並べることと、税務上同じに扱うことは別
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