複数の証券口座に分かれた資産を、ひとつにまとめて把握する
口座ごとの残高は見えても、合計が見えない。この状態が何を見えなくするのか、どう解消するのかを整理します。
口座は増えるが、合計は誰も出してくれない
証券口座がひとつだけ、という人は多くありません。 手数料の安さで選んだ会社、NISA 口座を開いた会社、勤務先の持株会、 暗号資産の取引所。目的が違えば口座も分かれ、増えることはあっても減ることは稀です。
それぞれの会社は、自社で預かっている資産の残高をきれいに表示してくれます。 しかし「あなたの資産の合計」を出してくれる会社はありません。 他社の口座に何がいくらあるかを知らないからです。
結果として、全体像を知りたければ自分で足し算することになります。 多くの人が表計算ソフトを開くのはこのためです。
合計が見えないと、何が見えないのか
資産配分が分からない
A 社に米国株、B 社に投資信託、C 社に債券、取引所に暗号資産。 この状態で「株式が全体の何割か」と聞かれて即答できる人は多くありません。
資産配分(アセットアロケーション)は、口座ごとに見ていても分かりません。 全部を足して初めて比率になるためです。そして比率が分からなければ、 偏っているのかどうかも判断できません。
同じ銘柄を重複して持っていることに気づかない
ありがちなのが、A 社で S&P500 連動の ETF、B 社で全米株式のインデックス投信、 という持ち方です。名前は違いますが、中身は大きく重なります。
口座ごとに見ていると「別の商品を持っている」と認識しますが、 合計してみると米国の大型株の部分が大きく重なっていることが分かります。 どちらも多数の銘柄に分散された商品ですが、思っていたほど分散が効いていない、という状態です。
配当の合計が分からない
配当や分配金は口座ごとに入金されます。年間でいくら受け取っているかを知るには、 やはり全部を足す必要があります。「配当だけで年間いくら」という数字は、 投資を続ける動機として大きいものですが、合計しなければ見えません。
口座をまたいで集計する 3 つの方法
1. 表計算ソフトで管理する
最も自由度が高く、多くの人が最初に行き着く方法です。 ただし株価を手で更新し続ける必要があります。 銘柄が 10 を超えたあたりから、更新が面倒になって放置されがちです。
関数で株価を取得する方法もありますが、対応している銘柄が限られていたり、 仕様変更で突然動かなくなったりします。
2. 口座を 1 社に集約する
選択肢のひとつです。ただし現実には難しい面があります。
- NISA で新規に買える金融機関は各年 1 社。変更は年単位でしかできず、 変更しても以前の金融機関で買った NISA の商品は移せません。 結果として、NISA の資産が複数の会社に残ることになります
- 移管には手数料がかかる場合があり、銘柄や移管先によっては移管自体ができないこともある
- 取扱商品が会社ごとに違い、集約すると買えなくなる商品が出る
- 暗号資産の現物は通常、登録を受けた暗号資産交換業者が扱うもので、証券口座にそのまま集約できない
「そのうちまとめよう」と思いながら何年も経つ、というのがよくある結末です。
3. 集計だけを別のツールで行う
口座はそのままにして、保有している内容だけを 1 か所に記録する方法です。 資産を動かす必要がないので、今日から始められます。
この方法の要点は、記録するのが「どこにいくらあるか」ではなく 「何をどれだけ持っているか」だという点です。 銘柄と保有数さえ分かれば、評価額は株価から計算できます。 株価は誰にとっても同じなので、自動で取得できます。
記録するときに決めておくこと
同じ銘柄でも、口座が違えば別に記録する
同じ ETF を特定口座と NISA 口座の両方で持っている場合、 合算せずに分けて記録します。取得単価が違いますし、 売却したときの税の扱いも違うためです。
詳しくはNISA と特定口座は分けて記録するで扱っています。
取得単価は、買ったときの通貨のまま残す
外国株を円で買った場合と、外貨で買った場合があります。 はじめから片方へそろえてしまうと、換算に使ったレートが分からなくなります。 買ったときの通貨のまま残し、取得時の為替レートも併せて記録しておくのが確実です。
円で見た損益を正しく出すには、この取得時のレートが要ります。 詳しくはドル建て資産の円換算で扱っています。 なお、確定申告に使う取得価額は、証券会社が発行する書類の円貨の金額で確認してください。
「その他」を作らない
細かい保有を「その他」でまとめたくなりますが、まとめた瞬間に 中身が分からなくなります。金額が小さくても 1 銘柄ずつ記録するほうが、 結果として管理は楽になります。数が多いなら、まとめて登録できる手段を使います。
まとめ
- 証券会社は自社分しか集計しない。合計を出すのは利用者側の仕事になる
- 合計が見えないと、資産配分・重複保有・配当の合計が分からない
- 口座の集約は選択肢のひとつだが、NISA の制約や移管の可否・手数料があり進みにくい
- 集計だけを分ける方法なら、資産を動かさずに今日から始められる
- 記録は「どこにいくらあるか」ではなく「何をどれだけ持っているか」
ほかの記事
- 暗号資産を資産全体の中でどう位置づけるか 値動きの幅が他の資産と桁違いなので、全体の中での比率を把握していないと、気づかないうちに偏ります。
- 資産の把握に、リアルタイムの株価は要らない 前営業日の終値で足りる理由と、リアルタイムを追うことで失うものについて。
- 家族の資産を合算して見ると、何が分かるのか 世帯の資産配分は、一人ひとりの口座を見ているだけでは分かりません。合算と個別を切り替える意味を考えます。